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人口増加率ゼロを達成した国は、世界に33カ国あるが、日本はその中の一国である。
人口増加率ゼロを達成した日本はすばらしいと思うし、日本政府や国民の人々に、「これはよいことなのだ」と考えていただきたい。 日本や残り32カ国の、人口が安定している国にとってのチャレンジは、「もっと赤ちゃんを産むことを奨励し、人口増加が続くように促そう」とすることではない。
それよりも、高齢者層が多いという新しい人口構造に適応できるように、社会と経済を設計し直すことに取り組むべきである。 人口増加ゼロというこの望ましい現実にフィットするように、就労環境と労働システムを作り直すことに、チャレンジしなくてはならない。
ほとんど人口の安定しているこれら33カ国の人口は、世界全体の14%に過ぎないが、その経験が示すところは明白である。 人口の安定した成熟産業経済では、地球に対する要求や生態系への圧力も増え続けることはなく、安定している。
たとえば、EUの人口は、3億8000万人で安定している。 すでに所得はかなり高いレベルにあるので、世界人口の86%を占めるその他約200カ国にとって、最も切迫している課題はいうまでもなく、人口増加にいち早く歯止めをかけることだ。
しかし、これは当該諸国だけの問題ではない。 人類全体の課題である。

世界の人口は1950年以来、2倍以上になった。 1950年以前に生まれたわれわれは世界人口が倍増するのを目の当たりにしている、人類史上最初の世代ということになる。
「1950年以来の人口増加は、人類が直立歩行を始めて以来の400万年間の人口増加より多い」と言い換えることもできる。 現在、一人あたりの穀物消費量は、年470キログラム程度で横ばいになっている。
つまり、EU加盟国は、世界で初めて地球の農業資源に対する要求を事実上安定させたということだ。 そして、最も重要なことは、ヨーロッパが実質的に穀物を輸出していることからわかるように、ヨーロッパは自らの土地と水の範囲内で農業資源への要求を安定させたのだ。
これは持続可能性へ向けての大きな一歩である。 人口増加の勢いはとどまるどころではない。
国連の予測では、2050年には世界人口は94億人に達するという。 33億人の増加である。
先進国の人口はこの間にやや減ると考えられているので、増加分の33億はすべて発展途上国に加わる。 今ですら発展途上国は天然資源が不足しているというのに。
これから増える33億人が必要とする水の量は、ナイル川の流量のおよそ30倍に等しく、貧しい人々の食生活を若干上回る程度の食事を考えても、世界の穀物収量を2倍にしなくては間に合わない。 それだけではない。
何百万という教室や家、雇用も必要になってくる。 予測されている人口増加のうち、約60%がアジアで起こると考えられている。
アジアの人口は、1995年の34億から2050年には54億以上になる。 中国の人口は現在3億だが、15億を超えてしまう。

インドの人口は、9億3000万から15億3000万へと跳ね上がり、地球上で最大の人口を抱える国になる。 2050年には、中東と北アフリカの人口は2倍以上になると見込まれており、そしてサハラ以南のアフリカの人口は3倍になる。
ナイジェリアだけでも2050年には3億3900万の人口となるのだ。 世界は正しい方向に小さな一歩を踏み出している。
しかし、もっと素早く行動を起こし、予測よりも手前で人口を安定させなくてはならない。 重要なのは「何人増えるか」や「何%か」ではなく、「人間が依存している生態系の収容力の範囲内で生活しているのか、していないのか」である。
前述したように、地球の人口は、毎年約8000万人ずつ増えている。 言い方をかえると、毎年、東京規模の都市七つ分の人口に、食糧と住む家を提供しなくてはならないということだ。
しかし、人口増加率を見てみると、1963年の2・2%という史上最高レベルから、1997年には約1・4%へと次第に下がってきている。 実際の増加人口も、1990年の8700万人から1997年の8000万人へと減ってきた。
人口増加が緩やかになってきた理由の一つは、インド、バングラデシュ、ブラジルなど多くの主要国で、予測以上に出生率が落ちてきていることだ。 世界全体では 一人の女性が生涯に産む子供の平均的な数は1985年の42人から2007年の29人に下がっている。
経済学者の中には、「いいかね、出生率は低下してきているから大丈夫さ」という人がいる。 しかし、出生率よりも大切なことは、漁場や森林産物、水などの生態系が持続的に産出できる量に対し、世界の人口がどのような要求や圧力をかけているのか、である。

現状では、これらの生態系は、今現在過度に搾取されている。 残念なことに、自然資本とそのうちどのくらいを消費したかを記録する適切な「在庫システム」を、われわれは持っていない。
各国及び世界全体の収容力を評価して初めて、人口予測が意味を持つようになる。 天然資源の破壊を抑え、すべての人々の基本ニーズを満たすには、人口を安定化させるための幅の広い方策をただちに取らなくてはならない。
バングラデシュとパキスタンの人口趨勢を比較してみると、今すぐに行動を起こすことがどれほど重要かがうかがえる。 1971年、バングラデシュがパキスタンから分離独立したとき、バングラデシュの政治リーダーは出生率抑制に努力した。
一方パキスタンのリーダーは、確固たる行動を取らなかった。 当時の両国の人口は、それぞれ約6600万人だった。
今日はパキスタンが1億4000万人、バングラデシュが1億2000万人だ。 2000万人も差がついている。
早急に家族計画プログラムを実施したために、バングラデシュはこの25年間に2000万人の人口追加を抑えることができただけではなく、2050年にはパキスタンよりも5000万人も人口が少なくてすむのである。 世界が現在直面しているのも同様の選択だ。
国連の予測によると、地球上の人口は2050年までに、ともすると72億人にまで達する可能性があるという。 結局のところ、将来の人口は、今の段階でどのような行動を取るかにかかっている。
そして、地球全体の人口がどのくらいになるかは、最終的には世界中の人々に直接影響を与えるのである。 人口が急増すると、発展途上国では、社会・経済・環境等の緊急問題に対処できなくなってしまう。

20〜25年ごとに人口が倍になると、食糧や水にしても、教育施設や医療サービスにしても、追いつくことはほとんど不可能だ。 こうなると人口増加は、経済成長の触媒ではなく、ほとんどの場合その逆になってしまう。
ある国連公使は、こういっている。 「多くの国にとって、人口増加は生死に関わる問題だ。
人口増加が経済発展を食いつぶしていくからだ。 増加を早急に止めない限り、一歩進んでも二歩押し戻されることになる」相互依存の強い今日では、人口増加という課題に対して高みの見物を決め込むことは不可能である。
経済学者は、「異なった文化や言語を持つ遠くの国々の事柄まで、すべてを計算に含めるのは複雑すぎる」と考えるかもしれない。 しかし、いくらそれが計算しにくいものであっても、人口の増加が、世界経済の発展に大きな影響を与えることだけは間違いない。



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